実施と検討、老人ホームの避難訓練マニュアル

地震や台風などの災害に見舞われることが多い日本。常日頃から防災への備えをしておくことは大事ですが、いざというとき安全な場所へと逃れるために必要なのが避難訓練。学校の行事としてお馴染みの避難訓練ですが、介護施設・作業所・老人ホームでも利用者・入居者の安全を確保するためにもちろん行っています。

今回は老人ホームでの避難訓練の実施とそのマニュアルについて紹介していきます。

老人ホームでのドライバーの仕事とは

マニュアルのベース

避難訓練マニュアルのベースとなるのは消防庁が公開している『水平避難訓練マニュアル』。詳しい内容は専門的になるため省きますが、限られた人員で入居者を安全に避難させるための手順が記載されています。建物も当然消防法に則ったつくりになっているので基本的にはそのマニュアルに従うことになるのですが、ほとんどの施設が消防庁のマニュアルの他に個別マニュアルを作成しています。

施設ごとのマニュアル

マニュアルの基礎となるのは先程紹介した消防庁作成のものですが、施設によって人員や入居者数、建物の構造は全く異なります。

そこで、施設ごとに施設長や介護士・職員が中心となって個別のマニュアルを制定しているのです。その際には近隣の消防署や大学などから専門家を招いて検討することもあるようです。

施設ごとのマニュアルは避難訓練ごと、或いは定められた一定の期間で見直しが行われ、必要な場合は改訂に及ぶこともあります。

避難訓練の実施計画

実際に避難訓練を実施することが決まった際にまず決めるのが日時。外に避難することもあるため天候も考慮します。家族が訪れることの少ない平日の昼間に行うことが多いようです。次にシチュエーションの決定。一口に災害と言っても様々なものがありますし、それによって建物が倒壊したのか火災が発生したのか、またそれがどこで起こったのかによって避難経路は変わってきます。

職員内で話し合って決定されます。そして不参加者の確認もあります。体調などの問題でどうしても避難訓練に参加することが難しい入居者をリストアップして参加者から除外するのです。とはいえ、これはあくまで特例的な措置。

本当に危険な容態で動かすことが難しい寝たきりの入居者などにしか適用されません。

実施時の注意点

第一に入居者への十分な事前通達は必須です。いつどのように避難訓練を行うのかを前もって理解しておいてもらうことがスムーズな実施に繋がります。ですので全体として言ったから、一度言ったからといって満足せずにしっかり理解しているかを確認し、場合によっては個別により丁寧な説明を行う必要もあるでしょう。

高齢者ですとやはり記憶能力が低下していることが多いので繰り返し伝えることが欠かせません。判断力・認知能力も低下しているので、実施時に本当に災害が来たと思い込んでパニックに陥る事例もあるそうです。丁寧かつ確実な伝達が必要です。

また、避難時の転倒などによる怪我にも警戒しましょう。軽い転倒だけでも骨折などに繋がる恐れがあるからです。

実際の流れ

避難訓練開始の時刻になるとそれを告げる放送が流れるのが一般的ですが、小規模な施設であったり放送設備が整っていない施設である場合は職員の呼びかけが合図となる場合もあります。自力での移動が不可能な入居者を優先しつつ、事前に定めた避難経路に誘導し避難を進めます。

職員は呼びかけ・誘導・介助の他に建物内の最終確認であったり、避難を終えた入居者を確認して担当者(責任者)に報告するといった仕事があります。参加者全員が避難場所にそろったことが確認できたところで基本的には終了となります。

施設によっては初期消火や救急救命に関する講習会・確認作業まで含まれることもあるとのことです。

実施後の動き

定例ミーティング(会議)の中で時間を作るか別に時間を設けるかは施設によりけりですが、避難訓練を行った日やその週に反省会が設けられることが大半です。施設長や責任者を中心に避難にかかった時間、職員の意見などを確認したうえで反省点・改善点をあぶりだし、それらを共有して完了となります。

場合によっては議事録を作成したり、マニュアルの改訂のために改めて会議を行うこともあるようです。後述しますが入居者によっては精神的・肉体的に不安定になることもあるのでそちらのケアも大事な業務の一環です。

職員の苦労

避難訓練の実施は職員にとって大きな負担となっているようです。事前の打ち合わせやマニュアル確認、実施後の反省会で勤務時間が延びるのが原因だそう。大人数が移動するので入居者の介助をする時間も増え体力的に消耗する職員も多いらしく、ただでさえ人手不足と負担の大きさが叫ばれている介護業界にとってこの避難訓練は大きな課題であると言えるでしょう。

また、普段と違うことをする、ということに対してストレスを感じる入居者も多く、不安定な状態に陥ったり激しく消耗し塞ぎこんでしまうケースもあります。そのケアにも労力を費やすため、避難訓練を嫌がる介護士は多いのだとか。

とはいえ入居者の安全を確保するためには実施しなくてはいけません。入居者のことは守りたいけれど自分自身が限界だ、という現場の声に耳を傾けてほしいというのが総意のようです。

入居者の負担

避難訓練を実施したことで入居者に影響が出る可能性があるという事は繰り返し書いてきた通りです。

避難訓練というのは食事やレクリエーションといった普段の生活とはかけ離れたイベントですので、精神的にも体力的にも影響は小さくありません。

強いストレスを感じていることもあります。そのような状態になった入居者は普段より感情的になる傾向が強いです。いつもは朗らかなのに職員に対して攻撃的な態度をとったり、明るい性格のはずが極度に悲観的で涙もろくなるといった事例があります。

これらは避難訓練による疲れのみならず、災害・戦争のトラウマを呼び起こしてしまったり、災害の想定から死を連想してしまうことも原因であるようです。こうした場合は無理に励ましたりせず、話を聞く、ひとりの時間を増やすなどの心理学的なアプローチを行い、少しでも早く日常を取り戻せるようにサポートをしていくことが大切です。

いつ来るか分からない災害といつ来てもおかしくない限界

老人ホームでは専門家の協力を得ながら時間をかけてマニュアルを定め避難訓練を行っています。ただその裏では、職員たちの大きな負担が発生している事を見逃してはなりません。災害はいつ来るか分かりませんから、常に備えておく必要があります。

逆に言えば備えさえしておけば平時は気にする必要もないのです。しかし、介護という仕事は24時間365日求められており止めることは出来ません。

安全確保と負担軽減の両立が目指されます。

参照→老人ホーム検索 > ウチシルベ